Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

上下階工事が追いかけ合うように進むリノベ現場_メゾネット住戸の渋谷区L邸

渋谷区L邸

メゾネット住戸の上下階、時間差で同時リノベーション工事進行中の渋谷区L邸です、

下階は解体が終わって、床地工事が進んでいる最中ですが…、

上階ではすでに建具枠造作が終わり、石膏ボード張りが始まっています。こちらは主寝室となるお部屋で、左側がベッドのヘッドボードで、右側のニッチ部分にテレビが入ります。

天井の折り上げ部分は、コーナーを直角ではなくカーブさせるデザインとしていますが、コーナー部分の木製の役物が入っていました。

石膏ボードが張り終わると、このように仕上がってきます。折り上げ部分には間接照明を入れると共に、隠蔽式エアコンの吹き出し口と吸い込み口が入っています。

ヘッドボードの奥側から見返した寝室の様子です。既にこちらのブログ記事で書いていたアドモンターのフローリング材が現地に入り、床フローリング張り工事も始まっています。

とても素直な木目で節(フシ)もほぼ無節と言えるほどきれいなフローリングです。

こちらは寝室の奥にあるウォークインクローゼットの空間です。

こちらにもフローリングが張られています。

先日組み立てていた東京バススタイルにお願いしたオーダーユニットバスも組みあがっていました。正面のガラス扉を開けると…、

ちょっと大きめサイズのこのような浴室となっています。正面壁上部の欄間(ランマ)窓はちょうど背面のミニキッチンに空いています。

こちらが、背面ミニキッチン側からみた欄間窓です。

石膏ボード張りが終わるとこのようになります。
外壁側の窓がない浴室ですが、廊下越しに自然光が入ってくるので、日中は電気を付けないでも浴槽の栓の開け閉めができるのです。

こちらは廊下と主寝室のラウンジも間仕切り壁です。引き込み扉用に二重壁になっていますが、ここだけ特注色で金属製枠をオーダーしたので、取り付けが遅れているようです。

そうこうしているうちに、金属枠が取り付けられて、石膏ボード張りと塗装の下塗りまで進んでいます。

廊下側から見たその開口部です。かなり大きな開口で、一枚の建具で納めようと当初は考えていましたが、これだけ大きな建具となると、室内へ搬入できないことが判り、袖壁を作ることとなりました。

先ほどの主寝室も徐々に仕上がってきました。壁には大理石のオデッサベージュをデザイン張りにしています。

上階は全ての部屋が仕上げ段階mに入ってきたので、関係者揃っての現場定例会議は、下階で行っています。おおよそ1.5か月遅れで下階も追っかけてきているので、ずーっと同じような打ち合わせが繰り返し行われています。

リノベ設計に効くハーフェレ金物_270度ヒンジを使った大田区S邸キッチン

大田区S邸

大田区のヴィンテージマンションリフォームS邸のキッチンの組み立てが始まりました。
今回は、トール収納の扉を270度まで開く特殊なヒンジと、極小サイズのエアヒンジといった、ちょっとマニアックな金物の工夫をご紹介します。

まずは背面コンロ側のキャビネットの組み立てからスタートします。左右にトールキャビネットがあり中央のカウンターセンターにガスコンロが入るキャビネットです。今回はこの向かって左側のキャビネットの使い方と特殊なヒンジについて後半で解説したいので、以下、キッチン組み立ての様子は簡単な紹介に留めておきます。

左上の大型ビルトイン型冷蔵庫が入るサイドキャビネットは、右から順に、引き出し式パントリー、その左が冷蔵庫置き場、動かせないPS部分をキャビネットと同材で囲んだ柱型、という構成です。
さらにその左側には、コーヒーメーカー等を置くカウンターと吊り戸が続きます。右上は中央に来るペニンシュラ型(半島型)カウンターです。こちらにシンクが入ってきます。3つの大きなキャビネットのレベルを出しながら慎重にセットしていきます。次は大判セラミックなどの化粧材を取り付けていきます。

こちらはペニンシュラに載せる天然石の甲板です。先回のブログ(他のプロジェクトのブログ記事ですが…)で細かく説明したクォーツサイトの「タージマハール」です。二段カウンター構成で、立ち上がり部分にコンセント穴が開いています。

ペニンシュラにカウンター材が乗った様子です。二段カウンターの上段(右側部分)と側面は天然石ですが、シンクが入っているメインのカウンター(左側部分)はタージマハールとそっくりな柄の大判セラミックです。

さて、今回のブログの本題です。ガスコンロの左側のトールユニットをご覧ください。こちらに一工夫がされているのです。箱の左側にちょっと大きめの丁番が幾つか取り付いているのが見えるでしょうか?実はこのトール収納の扉は270度開いて欲しいと考えていました。

270度まで扉が開く丁番を使う理由は、こちらの図解を見て頂くと分かりやすいと思います。お客さまが来たときには電子レンジや炊飯器を収納するトール収納内部を扉で隠すことができるが、普段は扉を開けて使いたいので、扉が邪魔にならないようにトールキャビネットの側面にピタリと寄せることができるという仕組みを実現することを目指しているのです。

12年前にお手伝いしたプロジェクトで、270度回転するヒンジが必要になり、色々と調べてハーフェレ社のこちらのヒンジを使ったことがありました。今回オーダーキッチンをお願いしたリネアタラーラの牧野さんに調べて貰ったのですが、残念ながら廃盤となっていました。

他社で探しても見つからないとのことでしたので、こういった複雑な動きをする丁番の専門会社であるハーフェレ社であれば、後継機種があるのではと考え、ハーフェレ社に直接問い合わせをしてみました。そうしたらなんと、日本では販売していないが、ドイツ本国では上記のヒンジが販売されていることが判り、このキッチンの為だけに輸入してもらうこととなりました!

特殊な動きをするヒンジなので、まずは分解写真で見てください。ただ、これだけだと良く分からないので、(初めて)動画をブログにアップしてみます!

手で押さえている部分が箱で、青いパネルが扉だとすると、扉を270度回転させることできる特殊な家具ヒンジです!このモックアップはオーダーキッチンをお願いしているリネアタラーラが扉の取っ手のことや、扉背面に取り付ける反り止めとの関係も含めて検討したうえで作ってくれたものです。

ちょっと先走ってしまいますが、完成時の様子がこちらです。担当スタッフの竹田さんにモデルさん役をやってもらいました。扉が完全に開くので、トール収納内部の炊飯器用引き出し式の出し入れもスムーズです。そして普段開ききった状では、玄関へと抜ける通路の行き来も問題なく、照明スイッチもうまく使えるように仕上がりました!

もう一つ、同じハーフェレ社の極小ヒンジもご紹介します。エアヒンジという名称のやはり優れものなのですが、こちらは既に日本に入ってきて約9年経つので建築・インテリア関係の方はご存じだと思います。

キャビネットにこのような穴をあけて、ヒンジを差し込んでビス止めするだけで取り付けができて、サイズが極小なので、ほとんど目立たないというものです。こちらについては、ハーフェレ社のデモ動画がありますので、そのリンクを張っておきます。

そしてこちらがひと通り組みあがって、養生されたキッチンの全容です。
以下、ちょうど良いタイミングでニュース記事が公開されました。

先月、新宿デザインセンターオゾンにて話題の(笑!)ハーフェレショールームを訪問取材した際の記事「リノベ設計に役立つ!ヨーロッパで磨かれたハーフェレの家具/建築金物の活用法を建築家・各務謙司氏が解説」がちょうどアップされました。

以前より金物で困った時に相談に乗って貰っていた、ハーフェレの佐野さんと大木さんに色々と細かく詳しくお話をした様子が分かる記事ですので、どうぞご覧ください!

カガミ建築計画の新事務所移転計画-5_造作家具と大判セラミック

カガミ建築計画事務所移転計画

南青山の新事務所の工事レポートの第5弾では、造作家具の立ち上げ工程と、大判セラミックの施工の様子を中心に紹介します。
現場には造作家具の主要パーツが搬入され、いよいよ組み立てがスタート。 造作家具の調整作業は、個人的にも大好きな工程なので、ここからはほぼ毎日現場に寄らせてもらいました。
打ち合わせ室のこのベニヤ板張りの壁に本棚と建具が設置されます。
L字型に曲がっている変形の枠が、
袖壁に取り付けられました。
以前のブログでも紹介した、このスケッチに左側の変形枠です。
この枠の上下を見ると、ディテールの考え方が判るはずなのですが、ちょっと判り難いですね…。ただ、この枠の上下をどう納めるかで、家具と建具の一体感が決まってくるのです。細部(ディテール)に空間の神様が宿るのです。
あまり広くない打ち合わせ室内で、造作家具をお願いしてる現代製作所のメンバーが揃って、材料を井桁に組んでから…、
皆で立ち上げて、台輪の上に設置して、隙間を調整します。
本棚と廊下から打ち合わせ室に入る建具枠と一体化された家具の完成です。
こちらは玄関のベンチの設置状況です。木下地に効くように桟木を打ってから、そこに甲板を載せると…、
2段式のベンチカウンターが組みあがりました。上の段は腰かけたり荷物を置くカウンターで、下段はスリッパ収納として使う予定です。
トイレの手洗いカウンターは既に下台が組みあがっており、そこに大理石甲板が載せられていました。
左側のこの個所にトール収納を設置します。
この箱が、そのトール収納なのですが、この中に ・打ち合わせ室に使うルートロン社のホームワークスの制御盤が内蔵される ・そのために、電気配線が集中し、 ・盤から発生する熱を逃がすための工夫が必要となる ……という3つの理由で、箱に穴あけ加工をしています。
上部やサイドに穴あけ加工がされています。
壁から出ている電線を穴に通しながら、そのトール収納を設置します。
実はこの箱の中に、打ち合わせ室の照明やブラインドをコントロールするルートロン社のホームワークスの盤が入ってくるので、電気配線が集中してくることと、盤からの発熱を天井裏に逃がすための穴をあけているのです。
こちらがルートロンの盤が入った最終形のトール収納内部です。棚の手前には多少熱くなって問題が無さそうなタオルやトイレットペーパーを収納する予定です。
このトイレ内のキャビネットの奥には、途中変更で造作家具屋を困らせてしまったトイレットブラシ置き場もできています。白く見える箇所はステンレス板の養生です。
もう一つの造作家具、打ち合わせ室のカウンターは既に組みあがっていて、キダマーブルの皆川さんたちが、大理石の甲板を載せているところでした。
大理石のカウンターを載せたら、壁の大判セラミック張りです。アークテック社が扱っているイタリア産のセラミックのフィアンドレのスタトゥリーオ柄です。
タイルの継ぎ目部分に刺さっている、黒とオレンジのモノは、タイルレベラー(あるいはタイルスペーサー)と呼ばれる道具で、①大判タイル・大判石材同士の段差(ラッピング)をなくす、②目地の隙間を一定に保つ、③接着剤が固まるまでタイル同士が動かないように固定するという機能を担ってくれる優れモノなのです。
同じように、フィアンドレの違う大理石柄のこちらの大判セラミックタイルを…、
トイレの壁に貼ってもらいました。 まだまだ面白い工程が続くので、もう少しお付き合いください。