Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

キッチン内窓・玄関ホール天井・乾太くんの排気ダクトの工夫@大田区S邸

大田区S邸

ヴィンテージリフォームの大田区S邸の工事が進んでおります。

玄関から廊下の空間は天井が決まり、空間を分節化する枠とニッチの縁取りのケーシングが入ってきました。

玄関ホールの天井は以前よりかなり上がって、モールディングも取り付けられて堂々とした空間になってきました。

リビングはそれほど変わっていませんが、キッチンとダイニングは天井が張られて、床と壁が組みあがってきています。

キッチン奥のこの窓回りは、ちょうどシンクカウンターの近くに来るので、どのように処理すべきかSさまの奥さまともかなり悩んだ部分です。

  • 明り取りとしての窓は欲しい
  • 透明ガラスだと中庭を挟んだ向かいの住戸から丸見えになる(今はDIYでシートを張っています)
  • シンク近くだと窓回りが汚れるので汚れにくくしたい
  • 時々窓を開けて空気を入れ替えたい

以上のことを考えて、既存の窓の手前に壁とフラットになるガラス窓を取り付けることになりました。手前のガラス窓に乳白のフィルムを貼って明り取りにする計画です。

内窓を開閉しないのであれば簡単なのですが、開閉が可能で、かつ壁とフラットに窓をおさめるために、家具扉にエアヒンジを仕込んで使う計画として、その枠造作を大工の斉藤さんに作って貰っています。

リビングは折り上げ天井の間接照明のアゴ部分のモールディングの取り付け中でした。

こちらは主寝室の様子です。壁付けクローゼットを新たに設けて、そのクロゼット部分の天井裏に、新しく設けたランドリールームからガス乾燥機の乾太くんの排気を接続する計画になっています。

ちょっと判り難いですが、木軸の壁を作っているちょうど背面に乾太くんが設置され、そこから天井裏に新しくコア抜きした穴を貫通してシルバーに防護された排気ダクトが主寝室の天井裏に通っています。

最終的には窓の一つをつぶして、そこから排気ダクトを外部に接続するという特殊な形で乾太くんを実現しました。因みにこの窓は隣接住戸等から見えない場所に面した窓で、この窓をつぶすこともリフォーム工事の申請の際にマンション管理組合に相談してOKを貰ったうえでの計画となっています。

壁付けクローゼットの為の下がり壁が組まれた状態です。すっかり排気ダクトは隠れて、その存在すら分からなくなっていますね。

その他、クローゼット室のハンガーバーの設置や、

リビングの照明スイッチの為の設えの準備などが進んでいます。

墨出しから始まる精度の高いリノベーション工事_横浜H邸

ザ・ライブラリー

ザ・ライブラリーのプロジェクトの紹介ブログです。
横浜H邸プロジェクトは、無事お客さまとの工事契約も締結し、工事着工が見えてきました。ここまで約1年間のお打合せが続きましたが、いよいよ工事を進める段階へとシフトしました。

本体工事の契約の前に、既に別契約で解体工事を終わらせている現場で、墨出しの確認を致しました。「墨出し」とは建築用語ですが、真っ新な土地に建てる新築住宅であれば、設計図面に基づいて壁を立てる位置を現場に墨(またはレーザー)で記していく作業を意味しますが、既存躯体があるマンションでは、既存の壁や柱位置と、解体前に設計していた図面の整合性をとる作業を指すので、少々考え方が違っています。
作業は各務と田口と担当の岸本、そして現場監督の栗原の4人で行いました。

まずはこちらが設計側で用意した墨出し用の平面資料です。ここに書いてあるのは、基準となる線がどこで考えているのか、そこからどれだけの寸法が必要かという考えを示した図面です。

こちらは最初の図面の補足資料となりますが、基準となる線がコンクリートの躯体からどのように求められているかを示しています。仕上げとなる石膏ボードとその下地のLGS(軽量鉄骨)を躯体に対してどのように立てて、どの寸法のものを使うかの考えを書いた図面で、こちらについては、事前に田口と栗原とすり合わせをしております。

事前に現場に入ってくれていた栗原が部屋の中央に取ったX軸とY軸の基準墨の交点にレーザー墨出し機を据えて、そこから基準線の位置を出していきます。
実はマンションの躯体でも直角(建築用語ではカネ)がずれていたり、壁と壁が並行ではなかったり、床が水平(建築用語ではロク)では無かったり、床から壁や柱が垂直(建築用語ではタチ)になっていなかったりするので、まずは部屋の中央に基準墨を出して、そこから墨出しをしてゆくのです。

レーザー墨出し機はこのようなもので、緑色の小型ロボットのようなものが本体となり、手前の黒い機器が受光機となります。3本脚で経っている墨出し機の下部に小さな赤い光が見えるでしょうか?これを基準墨の交点にピタリと合わせて、手前に見ている緑色のレーザー光を基準墨に合わせると、それに直行したレーザー光が出る仕組みとなっています。以前は、本体をレベル(水平)に据えるのも水泡を使った水準器を使って目視で調整していましたが、今はオートレベラーと言って、機械に内蔵された電子気泡管センサーで水平を自動に調整してくれるスグレ物なのです。
まだ、マンションリノベーション設計に特化する前、戸建て住宅も設計していた頃(20年近く前です…)は、差し金(大きな直角定規)や3:4:5の寸法で木の棒で組んだ大きな直角三角形定規、脚立に登った人がおもり付きの下げ振りを使って、2人掛かりで墨出しをしていたことをよく覚えていますが、今はそれに比べる本当に正確に、スピーディーにかつ楽になりました。

レーザー基準機に加えて、田口が持っているレーザー測量器(レーザー光線で距離を測る機器)も小型化して、安価になってきたので、こちらも使えば長い距離も巻き尺で2人掛かりで測っていたものが1人であっという間に測れて、便利になりました。

自然光が入りにくい位場所の方が実はレーザー基準機は使いやすいのですが、奥まった個所の浴室を設置する箇所の壁の直角度合い(タチ)を確認している様子です。床にレーザーの十文字が照射されているだけでなく、壁にも天井にも照射されているのが良く分かりますね。

隣接住戸との耐火二重壁になっている間仕切壁と躯体に対して断熱材(薄緑色のモワモワした部分)が吹かれた手前にLGSが立てられている箇所では、どちらを基準に考えるかによって内寸が変わってくるので、方針を相談しています。

このように実測しながら、相談しながら測った寸法を図面に描き込みながら、これから工事を進めてゆくうえで何が問題になるのかを打ち合わせをしていきます。

以下、この先はザ・ライブラリーブログをご覧ください。

白系大理石探しの旅3_軽量ハニカム複合石材の工場見学

ザ・ライブラリー

ザ・ライブラリーのプロジェクト、横浜H邸の大理石探しブログの続編です。
更新が遅くなってしまいましたが、先回のブログの通り、お目当ての白系大理石が見つかり、今回の中国福建省への大理石ツアーの第一の目的が叶いました!

中国で大理石を案内してくれた曽さんにお願いして、大理石のスラブ材を薄突きにしてアルミハニカム下地に貼る工場を見せて貰いました。

アルミハニカム複合大理石(別名、ハニカムストーン、薄板大理石複合パネル)はこのような製品となります。普通の大理石スラブは厚みが20~30(日本の標準)、15~20(中国の標準)とされています。
それに対して、アルミハニカム複合大理石は石材の厚みが3~5ミリで、その薄さを補強する形でアルミハニカムが背面から貼られた加工品となります。
一般のスラブ材と比較してのメリットは、
・重量が軽い(同じサイズのスラブ材と比べると、1/3から1/5程度)
・曲げ強度、耐衝撃性が高い
・軽いため、接着での施工が可能で施工性が高い
・寸法安定性が高く、たわみや反りが少ない
デメリットは、
・コストが高い(加工する手間が掛かっているので普通のスラブ材の倍以上の価格になる)
・厚みが薄いため、エッジ加工や曲面加工が難しい
といったことが特徴となります。

「薄く加工した石材にアルミハニカムに貼りつけたもの」と先ほど書きましたが、工場を見てそれが全く嘘だったことが判りました。

大理石のスラブの両面にアルミハニカムを密着させてから、スラブ大理石のちょうど中央からカットするという加工方法で、一度にブックマッチになった加工板を作るというのが正しい表現でした。使われている切断用の機械は、マルチワイヤー切断機と言われるもので、それほど特殊なものではありませんでした。

この工場の別の場所では、このように、巨大な石と井桁に組まれた鉄のフレームで、両面からアルミハニカムパネルを接着した石材のベースとなるものを作っていました。石材の硬度と同程度の強度のある、高強度接着剤を使っているとのことでした。
こうやって見ると、かなり素朴な技術で、接着固定するのにもかなりの時間が掛かりそうですね。

こちらはかなり大判のコスミックブラックという黒系の御影石の石材のアルミハニカム材でした。御影石は大理石より硬度が高く、カットする時間も倍以上掛かりますから、この製品にすると価格はかなり上がってくると思われます。
以下続きは、ザ・ライブラリーブログ記事をご覧ください。