世田谷区A邸の現場では、解体前の段階から、お客さまにも同席して頂いてのいくつかの確認作業を行いました。

調査のポイントは大きく2つです。一つは床下のシンダーコンクリートの厚み、もう一つはキッチン上部の梁下寸法です。これらの寸法は、キッチンに組み込む冷蔵庫の選定と密接に関係してきます。
まだお引っ越し前のお宅に施工をお願いしている青の片岡社長、現場監督の石坂さんと補助の川野君、そして設備のムラデン藤木社長が来てくれました。

この冷蔵庫の比較リストは、担当スタッフの竹田さんが作ってくれたものです。左から、①リープヘルのビルトイン冷蔵庫、②リープヘルのフリースタンディング冷蔵庫、③日立の大型冷蔵庫、そして④ガゲナウのビルトイン冷蔵庫を比較したものです。
①はIRBh5170とSIFNh5188(共にリープヘル)を組み合わせたもので合計容量は570Lとなります。②はリープヘルSBSes8486単体で740Lとなります。全体容量はあるのですがワインセラーがある分冷凍庫が小さくなります。③は日立のR-WXC74Xで735L。ただし奥行きは①②④と比べて深くなります。④はガゲナウのRC472304とRF411304の組み合わせで合計689Lとなります。
それぞれにメリットとデメリットがありますが、リビングからの見た目、使い勝手、そして冷蔵庫のグレードなどから、第一候補が④で第二候補が①となりました。

既存のキッチン床(フローリングより20ミリほど上がっています)と下がり天井の間の寸法(つまり既存キッチンの天井高さ)は2120ミリしかありませんが、ガゲナウの冷蔵庫の最低設置高さは2134ミリで、既に14ミリ足りない状況なのです。

そこでリノベーション工事に向けて仮住まいのお引っ越しが終わった後に再度部分解体をすることとなりました。ガゲナウで進めることになった場合は、お引き渡しまでのスケジュールを考えると、すぐにでも発注しないといけないタイミングになってしまったのです。
こちらは将来的に冷蔵庫を置く箇所の天井裏を確認している様子です。ちょうど冷蔵庫上に大きな梁が通っているのです。

直床の床下の寸法を探るのが一番難しいのですが、部屋の隅で床暖房が無い箇所のフローリングを剥がして…、

バールで床下のシンダーコンクリートを突いてみたところ、端部がポロリと外れてきました。

外れた個所と、外れたシンダーコンの厚みを実測した様子です。これで床下の情報がある程度わかりました。

キッチンカウンター上にレーザーを置いて、梁下寸法とシンダーコンの寸法から最大でどれだけの寸法が取れるかを青の片岡社長、現場担当の石坂さん、そして弊社竹田さんの3人で測量してくれている様子です。
この時点で確認できた、床スラブから梁下までの有効寸法は2299ミリでした。梁下については下地LGSを流さず石膏ボード2枚で渡すことにすると12.5ミリ×2枚で25ミリ。床スラブの不陸を仮に25ミリとして、その上に張る床構成を65ミリとすると、2299-25-65=2209ミリとなります。ガゲナウの最低寸法が2134ミリですから、約75ミリの余裕があることが判りました。床スラブの不陸が当初想定よりひどくても、これだけの寸法であれば問題ないことが判ったので、速報としてAさまにご連絡したうえで、ガゲナウの冷蔵庫+冷凍庫を先行発注させて頂きました。

こちらの図面が梁の位置と冷蔵庫と冷凍庫の位置関係が分かるキッチン平面図です。

これは床下の構成の考え方をAさまに事前に説明した際の様子です。

その後さらにアップデートされた資料はこちらです。
Aが最悪のケースとして既存床下のシンダーコンクリートが上手く剥がれなかった場合は、床暖房の下に断熱材を設けない(因みに既存の床構成がそのようになっていました)場合、Bはシンダーが上手く外れて、セルフレベリング材が15ミリで断熱材を20~35の間で設定して床暖房を電気式シートにした場合、Cはやはりシンダーコンが外れないで12ミリの断熱材を敷いて、ガス温水式床暖房を入れた場合、Dはシンダーを取り去って、ガス温水式床暖房を敷いた場合と各ケースを比較して、床下構成を考えてくれたものです。薄塗りの約25ミリ厚のシンダーコンクリートを撤去できるかどうかは、今の段階では判断が難しいこと(却って厚みがあればパッカー工法が使えるのですが…)、床暖房の熱源をガスにするか電気にするか(条件的にはどちらもできるのです)、そして床暖房下の断熱層の考え方それらの条件に合わせて設定してくれているので、床下についてもある程度の想定ができたのです。

その後に解体工事が始まりました。

フローリング下の既存の電気式暖房シートです。

先回事前解体で外れたシンダーコンクリートの箇所ですが、まずは人力で剥がそうとしたそうですが、かなりしっかりとコンクリートスラブに密着しており、容易に剥がせないことが判りました…。
そうなると、今回は騒音の少ないコア抜きからのパッカー工法が使えないので、ハツリ機(電動ハンマー)を使ってのかなりの騒音が発生する工事となりました。中規模のマンションで近隣にお住いの他の住人の方々も皆何らかのリフォーム経験をしている方で、お互いさまということでご理解をしてくださればよいのですが、病気で寝たきりの方がご自宅にいたり、受験の時期だったり、自宅SOHOをしている方がいらっしゃると、日中に出掛けることができず、大きな騒音は勘弁してほしいということになってしまうので、改めてお客さまと工務店でここから3日間の大きな騒音が出る工事のことをマンション内で告知して貰いました。

結果としては、きれいにシンダーコンを斫り取ることができました!ただ、工事途中で一度斜め上にお住いの方からその日は騒音を控えて欲しいとのご依頼があって、工期が一日伸びましたが、皆さまのご理解と解体工事会社の職人さんたちの頑張りでこのようにきれいに解体作業が終わったのです。

ここからは改めてレーザー水平器を使って、床スラブの不陸を調査してもらいました。

工務店青の現場監督補助の川野君が、約1メートル間隔でレベルを出したビスを床スラブに打ってくれました。

こちらのアップ写真でみえるビスのトップを繋げるとフラットな平面が生まれるという仕組みです

セルフレベラーを25ミリ打つ計算でフラットな床ができるので、そこに25ミリの断熱材、12ミリのベニヤ板、12ミリのガス温水式床暖房マット、12ミリのベニヤ下地の上に15ミリのフローリングを張る計算で、下がり天井部分で2150ミリ天井高さを確保できることが確認できたという訳です。
今回のキッチンでは、お客さまのご要望としてガゲナウのビルトイン冷蔵庫を組み込みたいという明確な希望がありました。ただ、この種類の海外製ビルトイン機器は、納期が掛かるのに数ミリ単位で設置条件の可否が決まるというかなりシビアな条件がつきものです。図面上では入るハズと思っていても、現場の実寸が数ミリ違うだけで成立しなくなることもあるのです。それでいながら、早い段階で発注しないと完成時に間に合わないという面倒なモノなのです。
今回はシンダーコンクリートが撤去できるかできないかが大きな判断の分かれ目となりましたが、最悪出来ない場合は床暖房下の断熱材を諦めれば、ガゲナウが実現できるというところで、早めの発注をすることができました。SDG’s的には断熱材無しでの床暖房は望ましくないのですが、元々がその条件だったことからAさまのご理解を得ることができました。工事の結果、シンダーも撤去できたので、無事断熱材も入れることができました。
床というのは、仕上がってしまえばほぼ気にしなくなってしまう部分ですが、住み心地には大きな影響を与える大事な部分です。床の軋みが出ないか、床暖房の効きが悪くないか、といったことが床下の構成の設計によって決まってくるのです。
ガゲナウのビルトイン冷蔵庫のミリ単位でのせめぎあいと、床全体の快適性を両方を成立させるために、何度もお客さまに事情を説明して、細かく調査を進めて、早めの判断をするというプロセスを取りました。
完成してしまうと見えなくなる部分ですが、こうした一つひとつの判断の積み重ねが、最終的な空間の精度と住み心地を支えていると考えています。









































